峰岸達さんは、ちょっとレトロな日本の風景を描くと抜群にうまいイラストレーターです。映画館がある昭和中期の街の絵なんか、懐かしくてぼくはとても好きなんですが、彼の似顔絵もなかなかのもので、とりわけ役者や芸人を得意としてる（中略）
ぼくより齢はずっと下なんですが、古い街の風景にしても、かなり昔の芸人にしても、とてもよく知っていて感心します。ご当人にきいたら、子どもの頃からこういう世界が好きで、映画やテレビなどでよく見ていたということでした。好き、ということは大事なんですね。特に関心がなくても資料を見て描くことはできるんですが、好きで描くのとは仕上がりがどこか違う。愛情のこめ方とか、気合の入れ方が、自然に違ってきちゃうのでしょう。　　和田 誠「似顔絵物語」白水社より

（以上、本文冒頭より抜粋）

約10年くらいの間に描かれた作品をまとめた、似顔絵の近作集。横山やすし、コント５５号、ザ・ドリフターズ、美空ひばり、石原裕次郎…など若年層にも懐かしく感じられる、「昭和レトロ」。味わい深い技が随所に光っています。

峰岸達（みねぎしとおる）
1944年群馬県高崎市生まれ。94年講談社出版文化賞さしえ賞。著書に「昭和少年図鑑」（白泉社）。「私の昭和町」（PHP研究所）。CD-ROM「青空画報」（東芝EMI）など。TIS会員。