故郷を離れて住む多くの地方出身者の例に違わず、（中略）私の思いは切実に故郷に向けられてきました。年老いて生活が不自由になった両親を助けられないもどかしさと罪悪感。戦前生まれの両親の世代が、戦後の価値観に戸惑いながらも、不器用にまっとうに生きようとする姿への共感と慈しみ。自分を育んでくれた豊かな自然とあのころの生活態度への敬意。（中略）両親の世代を応援し、故郷を離れて親兄弟を気遣いながら暮らさざるを得ない多くの同世代の人々と共感を分かち合いたいという気持ちが、ここに未熟ながらも一つの形になりました。
（以上、本文「はじめに」より抜粋）
カバーつき、サイズも少し大きな特別編集。イラストレーション、唐仁原教久。たおやかな語り口でやさしい気持ちに包まれる一冊。
中山とし子（なかやまとしこ）
1950年鹿児島県薩摩川内市入来町生まれ。佛教大学国語国文学科卒業。奈良女子大学大学院博士前期課程言語文化学専攻言語情報国語学コース修了。05年8月『父の山母の河』出版（HBギャラリー）。保母、児童英語講師、日本語教師などを経て、現在、木津川市国際交流協会日本語教室コーディネーターとして地域の外国人日本語教育に携わる。
