これは何度も言ってきたことだが、下手な絵をなんとかアイデアでカバーして取り繕う、というのがイラストレーターとして出発したときの私のコンセプトならぬコンタンだった。（中略）なんとか大きく破たんすることなく今日までやって来れたように思っていた。そんな怪しさも含めて、イラストレーターとしての仕事を振り返り、小さな一冊にまとめてみようと思い立ったのだが、（中略）僅かな枚数の絵を、隙間を余分にとって、見た目を誤魔化さざるを得なくなった。（中略）絵肌を違えて目先を変えれば、同じアイデアでも再利用が利くという、隠れたずるさが原因の一端になっているような気もしないではない。（中略）ともあれ、そんなふうに世を欺くようにしてまでイラストレーターであり続けようとしたのは一体なんなのだろうか。（後略）
（以上、本文冒頭より抜粋）
これまでのイラストレーター生活における作品をまとめた一冊。独特の強烈な印象のイラストは、上品な滑稽味に溢れている。
下谷二助（しもたににすけ）
1942年東京生まれ。90年講談社出版文化賞さしえ賞、91年講談社『年鑑日本のイラストレーション』、作家賞ほか受賞。著書には、『ネズミ事師の仕事と生活』情報センター出版局、『しゃべる肉体』共著・講談社、『描く書くしかじか』旬報社ほかがある。
